理学療法士ふじの部屋

理学療法士に必要な知識まとめ

PNFとアナトミートレインからの治療立案

PNFとアナトミートレインの組み合わせ

PNFとアナトミートレインを組み合わせることで、

患者さんの変化が生じることをよく経験します。

PNFは運動分析で問題がある動きを促通して、

正しい動きを誘導することや、

協調的な動きを誘導する手段、

柔軟性を改善する手段など、

様々な効果を引き出すことができますが、

PNFで促通するパターンを、

アナトミートレインと関連付けて治療を組み立てると、

疼痛の緩和や正常な運動へ誘導しやすくなります。

筋収縮から考えた実践例

例えばスーパーフィシャルバックライン(SBL)の一部である

ハムストリングスの過剰収縮により

違和感を訴えている患者に対しての

アプローチを考えていきたいと思います。

筋に対するアプローチに限定すると、

1.ハムストリングスのストレッチ、Hold-relax
       Contract-relax
2.ハムストリングスの内側と外側線維のリリース
3.骨盤後傾に対するフォースカップルを利用して、
  腹筋群や大臀筋の収縮を促す
4.拮抗筋である大腿四頭筋の収縮により弛緩を試みる

方法などが立案されると思います。

アナトミートレインのSBLからいえば、

後頭下筋群ー脊柱起立筋ー仙結節靭帯ー

ハムストリングス腓腹筋ーアキレス腱ー足底腱膜

がライン上の筋筋膜になるため、

ハムストリングス以外の筋肉の収縮を促すことで、

ハムストリングスの過剰収縮が、

改善される可能性があります。

このライン上の筋肉一つ一つにアプローチを

行うことで改善が図られることももちろんありますが、

PNFパターンを利用することで、

より効果的に症状の改善を図ることができます。

パターンの一例としては、

骨盤の後方挙上を行い、

脊柱起立筋を促通し、

脊柱起立筋の反応を高めることで、

SBLのライン上のハムストリングスの緩和を

図る方法が挙げられます。

その他にも様々なパターンが

効果的な変化を及ぼす可能性があります。

関節の動きからみた実践例

アナトミートレインを臨床で利用する場合に、

関節の動きについて考えることも有用です。

つまり、過剰運動性の部位と過少運動性の部位を探し、

その点にアプローチしていきます。

1.過少運動性の部位を様々な手技を用いながら、
  正常な動きにもっていく。
2.過剰運動性つまり固定性の緩い部位の
  筋収縮を促して安定性を提供する。

過少運動性に対しては、

Hold-relaxやContract-relaxにより

柔軟性を向上させていきます。

ストレッチや筋の横断マッサージ、横断伸張による

柔軟性の改善よりも、

収縮を伴う手技を取り入れた方が、

改善が得られやすい印象があります。

過剰運動性に対しては、

各PNFパターンやStabilizationを高める手技により

筋の反応を高めることが有用です。

過少と過剰どちらからアプローチする?

臨床では過少運動性に対してアプローチする方が、

効果が得られる印象があります。

過剰運動性が問題になっている場合でも、

過少運動性の部位は隣接しているため、

その部位に対してアプローチすることから

始めることをお薦めします。

 

次回からは各ラインと各PNFパターンの組み合わせを、

一つ一つ挙げていきたいと思います。

まとめ

1.筋収縮からPNFとアナトミートレインを考える
2.関節運動からPNFとアナトミートレインを考える

痛みの改善 ②肩凝りと肩甲骨の挙上筋

前回の考え方をもとに、

肩甲骨挙上と肩凝りについて考えていきます。

肩甲骨の挙上に作用する筋肉には、

僧帽筋上部繊維と肩甲挙筋がありますが、

以下のように回旋方向が異なります。

僧帽筋上部繊維:肩甲骨挙上+上方回旋

肩甲挙筋:肩甲骨挙上+下方回旋

この作用の違いから治療アプローチを考えていきます。

肩甲骨の肢位と筋硬結部位の4パターン

肩甲骨の姿勢観察と筋硬結の部位から、

4つのパターンに分類されます。

  1. 肩甲骨が上方回旋位で僧帽筋上部繊維に筋硬結がある
  2. 肩甲骨が上方回旋位で肩甲挙筋に筋硬結がある
  3. 肩甲骨が下方回旋位で僧帽筋上部繊維に筋硬結がある
  4. 肩甲骨が下方回旋位で肩甲挙筋に筋硬結がある

ここでは治療立案までの例として

⒈肩甲骨が上方回旋で僧帽筋上部繊維に筋硬結がある

場合について、さらに考えていきますが、

基本的には、肩甲骨が上方回旋位にあるため、

僧帽筋上部繊維の短縮位を、

正常なアライメントへ修正するための

プログラムが必要になります。

アプローチをする前の評価として、

まず、肩甲骨が上方回旋してる要因から考えていきます。

肩甲骨が上方回旋している要因

要因としては以下の3パターンが考えられます。

僧帽筋上部繊維の過剰収縮により上方回旋位になっている

②肩甲挙筋の筋力低下により上方回旋位になっている

③関連部位のアライメント異常や生活姿勢に伴い上方回旋位になっている

これらをどのように評価して、

治療に結びつけていけばいいでしょうか?

肩甲骨挙上の評価と治療方針の決定

肩甲骨挙上運動を実際に行うことが、

上記の3パターンを評価する事に繋がります。

①肩甲骨の挙上につられて上方回旋する

肩甲骨挙上の際に、

僧帽筋上部繊維>肩甲挙筋の筋収縮を

引き起こしているものと考えられます。

その場合の治療は、

肩甲挙筋の筋力強化と

僧帽筋上部繊維のリラクゼーションが、

必要になります。

僧帽筋上部繊維のリラクゼーションのみでは、

肩甲骨を再度保持するために、

僧帽筋上部繊維の筋収縮が必要になり、

結局リラクゼーションを図ったとしても、

その後に筋の形態は元に戻ってしまうからです。

 

②肩甲骨の挙上につられて下方回旋する

肩甲骨の挙上につられて、

肩甲骨が下方回旋するのであれば、

僧帽筋上部繊維<肩甲挙筋の筋収縮を

引き起こしているものと考えられます。

その場合は肩甲挙筋の筋力低下が主要因ではなく、

短縮位にある僧帽筋上部繊維の

リラクゼーション、ストレッチを図るのみで、

症状が緩和する可能性があります。

 

③回旋を伴わずに肩甲骨が挙上する

僧帽筋上部線維と肩甲挙筋の収縮バランスに問題はなく、

アライメントに異常をきたしている可能性があります。

例えば円背に伴い肩甲骨が上方回旋位にある可能性や、

デスクワークに伴い肩甲骨上方回旋位での作業が

多い可能性もあります。

そういった場合は、

胸椎の伸展を誘導する事が必要になるかもしれません。 

 

このように肩甲骨の回旋方向と筋収縮を確認する事で、

より詳細に治療プログラムの立案をすることができます。

まとめ

肩甲骨のアライメントと筋硬結部位から治療を立案する
肩甲骨挙上運動を行い評価、治療立案する

痛みの改善 ①筋硬結とは?

今回は痛みに対するアプローチを

筋硬結いわゆる「凝り」の観点から

考えていきたいと思います。

 

筋硬結の要因とは?

筋硬結は筋肉の血流が不十分になると生じ、

その要因は以下の4つのパターンが

複合している状態と考えられます。

  1. 筋肉を使い過ぎて過剰な収縮を引き起こしている

  2. 筋肉を使わな過ぎて固まっている

  3. 筋肉が常に短縮位にある

  4. 筋肉が常に伸張位にある

筋肉は適切に収縮と弛緩を繰り返すことで、

血流が生じアクチンとミオシンが滑走します。

上記した4つのパターンが組み合わさり、

血流障害が生じることで筋の滑走が阻害され、

疼痛誘発物質が蓄積されやすい状況になり、

結果として疼痛を引き起こします。

 

骨盤のフォースカップルから考えてみよう

今回は、骨盤を前傾する作用をもつ

背筋群に筋硬結が出現していると仮定して、

上記した4つのパターンについて

アライメントと筋力の評価から考えていきます。

 

 アライメントの確認

骨盤が前傾しているのか

後傾しているのかを評価します。

前傾しているのであれば、

背筋群は短縮位にあると考えられ、

ストレッチで伸張する事で

筋硬結が改善する可能性があります。

後傾しているのであれば、

背筋群は伸張位にあると考えられ、

収縮を入れる事で筋硬結が、

改善する可能性があります。 

 

筋力の確認

まず、骨盤の前後傾に作用する筋肉は

以下の筋肉が挙げられます。

骨盤前傾に作用する筋肉

腸腰筋、大腿直筋、背筋群など

骨盤後傾に作用する筋肉

腹直筋、ハムストリングス大臀筋など

 

まず、骨盤前傾に作用するその他の筋群を評価します。

腸腰筋、大腿直筋の筋力が十分であれば、

筋肉を使わなすぎて

筋硬結を引き起こしていると考えられ、

収縮を入れる事で筋硬結が改善する可能性があります。

腸腰筋、大腿直筋の筋力が不十分であれば、

筋肉を過剰に、収縮していると考えられ、

腸腰筋、大腿直筋の筋力を強化する事で

筋硬結が改善する可能性があります。

 

実際にはここまで単純ではありませんが、

アライメントと筋力からの治療立案は、

このようにして考えていきます。

 

まとめ

1.筋硬結の発生は4つのパターンからなる

2.要因を考える際はアライメントと筋力を評価する

 

 

ブログを開設した今の気持ち

はじめまして。

理学療法士のふじです。

普段は病院勤務をしていて、

主に整形疾患、中枢系疾患を中心に診療をさせて頂いてます。

日々診療をする中で疑問に感じた点や、

治療においてどんな事を考えているか、

勉強した事の復習も兼ねてアウトプットしていきたいと思います。

内容としては徒手療法や機能解剖をもとにした

臨床の考え方が中心になってくると思います。

よろしくお願いします。