痛みの改善 ②肩凝りと肩甲骨の挙上筋
前回の考え方をもとに、
肩甲骨挙上と肩凝りについて考えていきます。
肩甲骨の挙上に作用する筋肉には、
僧帽筋上部繊維と肩甲挙筋がありますが、
以下のように回旋方向が異なります。
僧帽筋上部繊維:肩甲骨挙上+上方回旋
肩甲挙筋:肩甲骨挙上+下方回旋
この作用の違いから治療アプローチを考えていきます。
肩甲骨の肢位と筋硬結部位の4パターン
肩甲骨の姿勢観察と筋硬結の部位から、
4つのパターンに分類されます。
ここでは治療立案までの例として
⒈肩甲骨が上方回旋で僧帽筋上部繊維に筋硬結がある
場合について、さらに考えていきますが、
基本的には、肩甲骨が上方回旋位にあるため、
僧帽筋上部繊維の短縮位を、
正常なアライメントへ修正するための
プログラムが必要になります。
アプローチをする前の評価として、
まず、肩甲骨が上方回旋してる要因から考えていきます。
肩甲骨が上方回旋している要因
要因としては以下の3パターンが考えられます。
①僧帽筋上部繊維の過剰収縮により上方回旋位になっている
②肩甲挙筋の筋力低下により上方回旋位になっている
③関連部位のアライメント異常や生活姿勢に伴い上方回旋位になっている
これらをどのように評価して、
治療に結びつけていけばいいでしょうか?
肩甲骨挙上の評価と治療方針の決定
肩甲骨挙上運動を実際に行うことが、
上記の3パターンを評価する事に繋がります。
①肩甲骨の挙上につられて上方回旋する
肩甲骨挙上の際に、
僧帽筋上部繊維>肩甲挙筋の筋収縮を
引き起こしているものと考えられます。
その場合の治療は、
肩甲挙筋の筋力強化と
僧帽筋上部繊維のリラクゼーションが、
必要になります。
僧帽筋上部繊維のリラクゼーションのみでは、
肩甲骨を再度保持するために、
僧帽筋上部繊維の筋収縮が必要になり、
結局リラクゼーションを図ったとしても、
その後に筋の形態は元に戻ってしまうからです。
②肩甲骨の挙上につられて下方回旋する
肩甲骨の挙上につられて、
肩甲骨が下方回旋するのであれば、
僧帽筋上部繊維<肩甲挙筋の筋収縮を
引き起こしているものと考えられます。
その場合は肩甲挙筋の筋力低下が主要因ではなく、
短縮位にある僧帽筋上部繊維の
リラクゼーション、ストレッチを図るのみで、
症状が緩和する可能性があります。
③回旋を伴わずに肩甲骨が挙上する
僧帽筋上部線維と肩甲挙筋の収縮バランスに問題はなく、
アライメントに異常をきたしている可能性があります。
例えば円背に伴い肩甲骨が上方回旋位にある可能性や、
デスクワークに伴い肩甲骨上方回旋位での作業が
多い可能性もあります。
そういった場合は、
胸椎の伸展を誘導する事が必要になるかもしれません。
このように肩甲骨の回旋方向と筋収縮を確認する事で、
より詳細に治療プログラムの立案をすることができます。